洋食で使うナイフ・フォーク・スプーンを表す「カトラリー」。素材やデザイン、サイズ、用途によってさまざまな種類があるので、詳しく知っておくと選ぶ楽しみも広がります。
「カトラリー」と混同しやすい「フラットウェア」「シルバーウェア」との違いを解説し、「カトラリー」にはどんな種類・サイズがあるのか、使われる素材にはどんなものがあるのかも紹介。
「カトラリー」の歴史もまとめているので、「カトラリー」とは何なのか、どんな価値があるのかを詳しく知りたい人はぜひ参考にしてください。
「カトラリー」とはどういう意味? 種類・サイズ・呼び名の違い・歴史
最終更新日:2024年03月27日
カトラリーとは?
「カラトリー」と間違えて覚えているケースも多い「カトラリー」とは、洋食で使うナイフ・フォーク・スプーンという口に料理を運ぶための食器3種を指す言葉です。
英語で「Cutlery(刃物)」と書くことからもわかるように、「カトラリー」はもともとナイフのみを指す言葉でした。しかしフォークやスプーンが食事に使われるようになってからは、3つの総称として使われています。
またナイフやフォークなどを「洋食器」とまとめて表すこともありますが、「洋食器」には皿やグラス、カップなども含まれますニュアンスが少し変わると覚えておきましょう。
アジア圏の場合、「カトラリー」に箸が含まれることもあります。
カトラリー・フラットウェア・シルバーウェアの違い
どちらも同じくナイフ・フォーク・スプーンを表す英語の「カトラリー」と「フラットウェア」。
違いはそれぞれの言葉を使用する地域にあります。「カトラリー」は主にイギリスなどのヨーロッパで広く使われる言葉で、「フラットウェア」はアメリカ独自の言葉です。
アメリカはヨーロッパから移り住んだ人々により作られましたが、交通技術や通信技術が未発達な当時は文化の伝達が今より緩やかだったため、独自のテーブル文化が生まれることに。
また銀メッキを含む銀製の洋食器すべてを表す「シルバーウェア」という言葉もありますが、「フラットウェア」はこれらと銀製のナイフ・フォーク・スプーンを区別するために作られた言葉です。
カトラリー | ナイフ・フォーク・スプーンを表すヨーロッパで使われる言葉 |
---|---|
フラット ウェア |
ナイフ・フォーク・スプーンを表すアメリカで使われる言葉 |
シルバー ウェア |
銀メッキを含む銀製食器の総称 |
アメリカで「カトラリー」はナイフ・包丁を指します。ヨーロッパとは異なり、本来の意味で「カトラリー」という呼び名が使われています。
カトラリーの種類とサイズ
「カトラリー」のサイズは大きく分けると2種類。
メインディッシュなどに適した大きめのテーブルサイズと、前菜やデザートに適した一回り小さいデザートサイズです。
このほか料理によって使い分ける「カトラリー」もあるので、おもな「カトラリー」の種類・サイズ・用途を簡単に紹介します。
カトラリーの種類とサイズ
ナイフは7種類以上
サイズ | 用途 | |
---|---|---|
テーブルナイフ | 約24cm | メインディッシュに使用。肉・魚・野菜など料理全般の切り分けに使われる |
デザートナイフ | 約22cm | デザートのほか、前菜やステーキなどにも使用。テーブルナイフより一回り小さい |
フィッシュナイフ | 約22cm | 魚料理に使用。刃が広くなっており、魚の身を抑えたりソースを塗ったりしやすくなっている |
フルーツナイフ | 約18cm | 果物やチーズに使用。デザートナイフよりも小ぶりで細身 |
バターナイフ | 約15cm | バターを切り分けるのに使用 |
バター スプレッダー |
約15cm | 切り分けたバターをパンに塗るのに使用。刃が幅広くなっている |
ステーキナイフ | 約24cm | 肉料理に使用。筋が多い赤身肉の切り分けに特化している |
フォークは10種類以上
サイズ | 用途 | |
---|---|---|
テーブルフォーク | 約22cm | メインディッシュに使用。肉・魚・野菜など料理全般に使われる |
デザートフォーク | 約19cm | デザートのほか、日本では前菜やパスタ、肉料理にも使用。テーブルフォークより一回り小さい |
フィッシュ フォーク |
約19cm | 魚料理に使用。ほかのフォークと区別するため装飾が施されているものが多い |
サラダフォーク | 約16cm | サラダに使用。小回りが利くよう柄の部分が短く、葉物野菜が摂りやすいよう4本刃になっている |
フルーツフォーク | 約16cm | 果物に使用。細身で刺しやすくなっており、2本刃・3本刃が主流 |
ケーキフォーク | 約14cm | ケーキに使用。カットしやすいよう左端の刃が太くなっているものが多い |
ヒメフォーク | 約12cm | 和菓子やカットフルーツに使用。日本で最初に作られたオリジナルカトラリー |
スパゲティ フォーク |
約19cm | スパゲティに使用。巻き取りやすいよう刃が波型になっているものなどがある |
カクテルフォーク | 約14cm | フルーツや海老などのカクテルに使用 |
サービスフォーク | 約22cm | 大皿料理の取り分けに使用 |
スプーンは10種類以上
サイズ | 用途 | |
---|---|---|
テーブルスプーン | 約20cm | メインディッシュに使用。ブイヤベースやシチューにも使われる |
デザートスプーン | 約18cm | デザートのほか、日本ではカレーやピラフなどにも使われる |
フィッシュ ソーススプーン |
約19cm | ソースの多い魚料理に使用。ふちが薄く底が平らで片側にくぼみがある |
スープスプーン | 約18cm | スープに使用。カレーやシチューにも使われる |
ティースプーン | 約14cm | 砂糖やミルクなどを混ぜるのに使用。ティーカップ&ソーサーに添えられる |
コーヒースプーン | 約12cm | ティースプーンより一回り小さい。コーヒーカップ&ソーサーに添えられる。 |
アイスクリーム スプーン |
約13cm | アイスクリームに使用。浅く平らなのですくいやすい |
ケーキスプーン | 約16cm | ケーキに使用。ムーススプーンと呼ばれることもある |
ブイヨンスプーン | 約15cm | ブイヨンスープに使用。スープスプーンより一回り小さい |
サービススプーン | 約22cm | 大皿料理の取り分けに使用 |
このほかにも『チーズナイフ』『エスカルゴフォーク』『モカスプーン』など、特定の食材や料理、用途に応じて作られた「カトラリー」も存在します。
カトラリーのサイズは国ごとで違う
欧米ではテーブルサイズの「カトラリー」が一般的ですが、その中でも北欧やドイツのものは大ぶり、フランス・イギリス・イタリアのものはやや小ぶりなど、国によって多少の差があります。
アジア圏では体格が理由で、テーブルサイズを使わずコースを通してデザートサイズを使用する場合も。
私たち日本人が普段使用している「カトラリー」は、欧米の人たちが使うものより一回り小さい可能性があります。
カトラリーの素材と特徴
「カトラリー」に使用される素材は様々です。代表的な素材とそれぞれの特徴をまとめました。
純銀
純銀の「カトラリー」は、純度92.5%以上の銀を使って作られます。
表面の輝きが特に美しい高級品で、抗菌性にも優れていることが魅力です。
ただし空気中の硫化水素と反応して黒く変色しやすいため、こまめな手入れが必要になります。
洋白銀器
洋白銀器の「カトラリー」は、銅・ニッケル・亜鉛で作られた合金の表面を銀メッキでコーティングして作られます。
見た目は純銀の「カトラリー」とほとんど変わりませんが、価格が比較的安いことが特徴です。
ステンレス
ステンレスは鉄とニッケル、クロムなどを混ぜて作られた合金です。錆びにくく耐久性に優れており、現在はステンレス製の「カトラリー」が一般的。
ニッケルやクロムが多く含まれるほど錆びにくくなるため、高価になる傾向があります。
アルミ
アルミは銀の1/4、ステンレスの1/3ほどと、ほかの金属に比べて軽いことが特徴。「カトラリー」に使用することで、持つときの負担が少なく扱いやすい点が魅力です。
熱伝導率が良く、アイスクリームスプーンにもよく使われます。手の熱がスプーンに伝わり、硬いアイスが食べやすくなることが理由です。
ホーロー
ホーロー(琺瑯)は、金属素材の表面をガラス質の素材(釉薬/ゆうやく)で焼き付けコーティングしたもの。金属の強度とガラスの錆びにくさ、光沢をあわせ持っています。
割れやすいデメリットがありますが、ホーロー製の「カトラリー」は見た目が良く、口当たりもなめらかという特徴があります。
木製
木製の「カトラリー」は軽く断熱性があります。木の温もりを感じられる質感やデザインも魅力です。
漆などでコーティングされているものもありますが、シミや傷が付きやすい点はデメリットといえます。
カトラリーの歴史
現在「カトラリー」と呼ばれるナイフ・フォーク・スプーンの3つがすべて食事で使われるようになったのは19世紀頃からと言われています。
実は歴史が浅い「カトラリー」。ナイフ・フォーク・スプーンの歴史を簡単に解説します。
ナイフは15~16世紀から使われ始めた
「カトラリー」の中で一番最初に広く使われるようになったのはナイフです。
中世ヨーロッパ以前は「指は神様が与えた優れた道具である」という宗教的な考え方から、手づかみで食べるのが一般的でした。
12世紀に入るとナイフが使われ始めましたが、当時は一人ひとりがナイフを使うのではなく、取り分け用のナイフが一本用意されているのみ。
15~16世紀になってようやく、ひとりずつナイフを使うようになりました。
フォークの使用が拡大したのは17世紀
ナイフが広く使われるようになってからも、手づかみで食べる宗教観は根強く残っていました。素手では難しい「切る」作業を担うナイフとは異なり、12世紀になってもフォークはあまり使われていなかったそうです。
当時のフォークは二股の簡素な形状で、口に運ぶのが難しく、使いづらかったことも一因であると考えられています。
17世紀ごろから、ようやく「ナイフで切った食べ物を口まで運ぶ食器」としてフォークが使われるようになりました。
イタリアでは11世紀ごろと早い時期から使われていたましたが、これはパスタを美しく食べるためと言われています。
スプーンはもともと食事で使われていなかった
スプーンの形状をした道具は、古代から世界中で使われていたことがわかっています。しかし、食事目的ではなく化粧や調理の道具として使われていたようです。
15世紀頃から食事でも使われ始めましたが、当時はまだ一般的になることはありませんでした。スプーンは高級品だったため、食事の道具としてではなく財産として持っている人が多かったとされています。
また、キリスト教徒は子どもが生まれると洗礼を受けさせますが、その際に名付け親がキリスト十二使徒を彫り込んだスプーンを贈る習慣があったようです。食事に使う道具というよりも、宗教的な意味合いが強い用途で使われる道具だったと考えられています。
現在は資産としてカトラリーを集める人もいる
「スターリングシルバー」とも呼ばれる最高級品の純銀食器は1本数万円以上します。そのため現在はスプーンに限らず、銀食器全般を資産として集める人も。
銀食器には、フランス宮廷御用達の「Christofle(クリストフル)」やイギリスで親しまれている「QUEEN ANNE(クイーンアン)」などさまざまなブランド・メーカーがあります。
普段使い用の「カトラリー」だけでなく、コレクション・資産として「カトラリー」を集めるのもおすすめです。
【まとめ】カトラリーは選び方次第で食器にも資産にもなる
「カトラリー」とはナイフ、フォーク、スプーンという料理を口に運ぶ3つの食器を指す言葉です。
お気に入りの「カトラリー」を手元に置くと食卓が楽しくなるうえに、高級品の銀食器は資産にもなります。
「せっかくこだわるなら価値のあるものを」という人にとっては、高級ブランドの銀食器を収集するのも価値ある「カトラリー」の使い道です。
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